2012年1月7日土曜日

古代ギリシャの音楽世界

世界の美しい秩序の根本にあるのは「数」、和音はそこから得られるものとし、天体は音階(調和)であり「数」であると考えたのはピタゴラス。ギリシャ人にとって科学は実利的なものではなく、審美的あるいは形而上学的営みだ。

ギリシャ科学では宇宙の生成は美しく秩序だったもの、ヘシオドスの宇宙の誕生は詩であるとともに科学でもあった。

その根本となる「数と比例」、紀元前六世紀ピタゴラスは協和音程と数の比例との間に密接な関係があることを発見し合理化した。ピタゴラスは鍛冶屋のハンマーが奏でる様々な音の良く響き合う瞬間があることに気付き、世界の美しい秩序の元にあるものは「数」であり、和音はそこから得られると確信したのだ。

音程とは二つの音の高さの隔たりを言う。一度はユニゾンつまり隔たりがない。ドレミファ・・・ではドとレの隔たりは二度、四度はドとミ、五度はドとファの隔たりを言う。伝説ではピタゴラスはキターラの開放弦を使って、ということになっているが、二点間に単弦を張り、開放弦の音と単弦の中央を押さえた時の音、つまり弦の長さの比が2対1の時、2つの音は互いに良く響きあうことを確かめた。

次に弦の長さを2対3、3対4に分割し弦を弾き、同じく開放弦と良く響き合うことを確認する。弦の長さを2対3に分割して弾くと開放弦とは五度の隔たり音、3対4の分割では四度の隔たり音、どちらもお互い良く響きあう。このことから1対2はオクターブ、2対3は完全五度、3対4は完全四度の音程を持ち、協和音程は「数の比例」と密接な関係にあることを発見している。

その後アリストテレスはピタゴラスの考えを強調し「数」をすべての存在の構成要素であるとした。天体は数であり音楽であると紀元前四世紀、彼の「形而上学」で定義づけている。一方、アリストテレスより早くプラトンは「国家」の中で算術と幾何、つまり数と形に関する学問こそ、現実を理性的に認識するための根拠なのだと言っている。

彼らの仕事はヨーロッパにおける合理主義、視覚や経験では捉えられない現実を、理性(ロゴス)と思考によって捉えるものとしたことにあり、その原理は「数」の「美しき秩序=ハーモニー」そして「天体の音楽」にあったと考えられている。

さらに古代ギリシャおいて音楽は現実の響きではなく、世界全体が照らし出される場となるもの、それは官能をくすぐるものではなく、理念に導かれる人工的世界とみなしている。笑いにさんざめく父神ゼウスの館、雷 轟かす雪を戴くオリンポスの高嶺と不死の神々の館、神々が住まう天上の館もまた「数と比例」による人工的世界なのだ。

構成された建築や音楽の中に数比関係が見いだされたからといって、それが感覚的な美しさを証拠だてる根拠はどこにもないが、感覚ではなく合理への信頼、理性的認識としての「音楽と建築」は全く同相にある。ともに「数」から生まれた兄弟。天(コスモス)に鳴り響く天体の音楽と天上の館はギリシャ神殿が石造建築として誕生するまぎわの時代、すでに確固たるイメージを持って地中海世界に広まっていた。

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