2010年10月28日木曜日

ボロミーニのサンタニェーゼ教会

広場を囲む家々の連なりがまるでオペラ劇場の桟敷席にみえるナウ゛ォナ広場ですが、その桟敷席にあって、際立ったリズムを生み出している建築がフランチェスコ・ボロミーニ設計のサンタニェーゼ教会です。
この教会はパンフリー家の古い祈祷所を改築したもので、パンフリー家出身の教皇インノケンティウス十世は政敵バルベリーニ家をフランスに追いやり、広場そして宮殿・教会をバルベリーニにならい、ここナウ゛ォナで整備することにしたのです。
バルベリーニ家のウルバヌス八世に重用されたベルニーニもまた、この教皇には疎んじられ、彼に替わりボッロミーニが教皇庁の主任建築家となり、この教会の設計を担当することとなったようです。
政変に翻弄される芸術家を調べることは興味深い作業ですが、今日はここではボロミーにのサンタニェーゼに限定して書いてみたいと思います。
ボッロミーニのサンタニェーゼ教会はバロック都市と建築のありようを的確に示している教会です。
ポポロ広場の双子の聖堂同様、ここでも建築は都市の要請によってデザインが決められているのです。
つまり、この教会もまた広場を活気づけるために計画されました。
しかし、ボッロミーニはただ、広場の要請にのみ答えたわけでははないのです。
むしろ、彼は建築と広場の関係を積極的に追求し、二つを同時に作り替えてしまったと言って良いようです。
サンタニェーゼ教会の特徴は広場に対し凹型のファサードを示したことにあります。
これにより広場の空間が教会の内部へと導かれ、貫入するように見えてきます。
一方、刳り抜かれたファサードにより教会の上方のドーム屋根がますます広場の前面へと踊り出る。
つまり広場と建築はお互いの空間を相互に取り込もうとすると同時に、ドーム屋根と「四大河川の泉」のオベリスクは共に際立った量塊となって空間の中で合い対峙し、広場を活気づけているのです。
バロックの都市と建築が成しえたこと、それは主題と変奏が折りなす中、空間と量塊あるいは内部と外部が鬩ぎあうドラマでありオペラであると言えるのではないでしょうか。