建築の誕生は人間が自然から分離した時(大地からの飛翔)、動物や自然とは決別し「人間の世界」、人間的エンクロージャー(集団的空間)を作ることを意味している。そのため必要とされたのが柱、壁、屋根、この三つをどう組み合わせるかが建築デザイン。
人間と自然との分離、それは境界を明確にすること、人間的エンクロージャーをどう作るかがテーマだが、それは家であり、村落。しかし、人間が人間として生き続ける為、最も必要とされるものは生きぬく為の食料ではなく、共に生きる人間。つまり「人間的エンクロージャー」とは都市を意味している。
都市は農業生産や狩猟を活発化し、交易という組織的合理化と潅漑という技術的効率化により、多くの余剰を生み出す役割を担っている。しかし、それが都市のすべてなら、都市革命は存在しない。新石器革命を洗練化し続ければ良い。
都市は「共に生きる人間が人間として生きる場」。都市を作るのは建築だが、都市革命は、都市を自然世界にある村落から分別させたことにある。「都市と建築」は文明が実体化したもの。それは、箱やモノではなく情報あるいは言葉、「人間が人間として共に生きる」というメッセージが形象化されていると考えて良い。
参考:「感性の覚醒」中村雄二郎・岩波書店
現在われわれ人間は、自分たちが「自然」の一部であったことを、あらためて痛切に感じさせられている。この痛切さは一度自然から離れてしまったことによるものである。かって人間は環境のなかに、あるいはコスモスのなかに包まれて、あるがままにあったとき、その環境やコスモスを「自然」として意識することがなかった。・・・・すべてが自然であり人間がそのなかに包まれていたとき、人間が「人間」として明確に自覚されなかったように、自然は「自然」人間から区別してとられることも、対象化してとらえられることもなかったのであった。・・・・文明の発達は人間を自然の脅威から次第に解き放って行くとともに、人間を自然から引き離すことになった。そのような自然から人間の解放は多くの段階を経て行われたが、もっとも決定的な段階を劃したのはやはり近代科学文明の成立であろう。
参考:「都市の文化」ルイス・マンフォード・鹿島出版会
都市を村落から分別させるものは何か、あるいは村落の消極的な農業体制を、都市の積極的な制度に変えた原因は何か。
人口規模や経済資源の拡大ばかりでなく、もっと動的な原因は人間どうしのコミュニケションや交歓拡大への要求である狩りから農業への変化による人口増加が都市化を促し、通商路の拡大と職業の多様化がそれを助長した。しかしその要因は経済的視点にのみ求めるべきではない。都市は何よりも集団的人間の生活の現れであり、合目的的な社会的複合体なのだから。