2012年5月8日火曜日

魔性の魅力、ネトレプコの「マノン」

マノンを東劇で観る。 今年のMETライブビューイングでもっとも楽しみにしていたのはマスネの「マノン」、ネトレプコです。 彼女のマノンはYoutubeではすでに大人気。
2007年のウィーンではアラーニャ、2010年のロイヤル・オペラハウスではグリゴーロ、そして今日のメトではピョートル・ベチァワを騎士デ・グリュー役としての、つまり当代きってのイタリアの3人の美男テノールを相手役としての官能的なソプラノです。

彼女はすべてに魅力を持つ現代のディーヴァ。 そして今日のオペラはその持ち味を充分に発揮しての小悪魔マノン。 男性ファンならず誰もが観てみたい、聴いてみたいと思うのは当然です、その2幕・4幕は特に圧巻。
これがオペラ!、と思ってしまう。
これがオペラ、(Youtubeをご覧ください)まぁ、彼女ならではかもしれないが。

17世紀のモンテヴェルディのヴェネツィア・オペラはどれもこれも官能的魅力にあふれている。 しかし、最近のオペラはどうも慎ましやか、偏見だろうがそう思ってしまう。
今日のネトレプコどうしてどうして、そしてその歌はどこまでも爽やか。
ロシア生まれの彼女、ゲルギエフに鍛えられたそうだが、その人柄はどんな役でも魅力一杯。

「マノン」の魅力はオペラ・ファンより文学ファンのほうが詳しいのかもしれません。 アナトール・フランスの言葉だっただろうか、「マノン・レスコー」を書いたアベ・プレヴォーはダンテにもシェークスピアにもゲーテにもスタンダールにもなし得ない、もっとも魅力ある女性を世に送り出した、と言っている。

その魅力は岩波文庫でも味わって下さい。 絵画ですが、一端は同時代のブーシェの「ソファーに横たわった少女」が伝えてくれる。
オペラではプッチーニの「マノン・レスコー」と今日のマスネ「マノン」の二作ある。 どちらが良いかは好みだろうが、最近はネトレプコの熱演でマスネが目立つ。

昨年のメトは確かプッチーニの「マノン・レスコー」。 ボクの好みはマスネ。 彼の方がどちらかというと様式化されていて、プッチーニに比べ筋立てがやや解りにくい。
しかし、その全体はやはりフランスで生まれたオペラ、とてもスマート。
音楽も比べてみるとプッチーニはメローでドラマチック。
マスネはどこまでもロマンチック。

今日のメトの舞台は五幕ともスロープを多用している。
このオペラの持つ愛し合う二人の持つ不安感・不安定がうまく表現されている。 (演出はロラン・ベリー、指揮はファビオ・ルイージ)

今日は観ていて、椿姫のヴィオレッタを思い出した。 考えてみると原作はどちらもフランス、純粋だが薄幸な娼婦のお話し。 ヴェルディとプッチーニというイタリア人のオペラにはいつも泣かされてきたが、 このフランス語のオペラもなかなか胸に迫る。
相変わらずの語学音痴ではあるのだが。

こんな素晴らしいコメントをいただいた。
>ボクもマノンのような一直線の女性が好き! 魅惑的で移り気な女に対する若い貴族のひたぶるな恋。 彼女は全く本能のままの生きものなのであるから、自分の思うままに行動せずにはいられない。 彼女は悪意を持っているのではない、ふしだらで軽卒なのです。しかし、正直で、真面目です。