2017年8月22日火曜日

ワーグナーの生誕100年、メトの「パルジファル」

週末に今年のバイロイト、ニュルンベルグがプレミアム放送され、面白かったので、今日はメトのワーグナーを楽しむことにし、東劇の「パルジファル」に行く。
ニューヨークのメトロポリタン劇場での2013年3月の作品。東劇ではその4月、映画版がすぐに上映され、今回はそのアンコールということになる。
ワーグナーは大人気、平日の午後だが客席はほぼ満席、生誕100年で評判になっていた演目、当然かもしれない。しかし、ボクには苦手なワーグナー、YouTubeにもアップされていたのだが、今日まで全く見過ごしていた。

内容は神聖祝祭劇と呼ばれるワーグナー最後の大曲、延々と5時間を超えるが地味なオペラだ。キリストを刺した聖槍とその時の血を受けた聖杯を守る中世騎士団の王アンフォルタス。彼は魔法使いクリングゾルに騙され、聖槍を奪われ大きな傷をおい、瀕死の状態にある。
その槍を愚者パルジファルが取り戻し、王と騎士団を救済するという物語。様々な歴史神話を題材にしてきたワーグナーだが、この大曲はキリスト教の持つ「愛と救済」を真正面から取り上げ、人間の愚かさ、弱さ、清さ、そして苦難を克服する忍耐と栄光を象徴と引用によって歌い続けるという、まさに神聖な人間訓話。

制作された舞台は映画版を意図した細かい構成。やや斜めに設えられている床面だが、上方からのカメラ目線ではないと気がつきにくい、水の流れや小さな草花が物語進行上の微妙な演出効果を発揮している。
その演出はメトは初めてのフランソワ・ジラール。この楽劇なら当然かもしれないが、やや堅苦しい教会の神父か牧師の訓話劇のような趣から、ワーグナーという19世紀の男の時代の作品をこよなく愛し、忠実にオペラにした演出家、という印象を持った。
上演された2013年はまさにワーグナー生誕100年、適材適所の上演と言える。
指揮はダニエレ・ガッティ、メトで聴くのは初めてだが、慎ましいアンサンブルはボクの好み。正直なところ、この楽劇の終幕では朗々とした凱旋のメロディーと荘厳な鐘の音の連なりを期待したが、今日の演奏は何処までも慎ましく、神聖に「愛と救済」を支えている。

二幕のクリングゾル館での魔性の女クンドリとパルジファルの絡まりは圧巻だ。パルジファルはあらゆる誘惑や欲望から立ち戻り、グリンゾルがかってアンフォルタスから奪った聖槍を取り戻す場面。今日のパルジファルはヨナス・カウマン、クンドリはカタリーナ・ダライマン。彼ら二人のこの幕の迫真的歌唱は、延々と5時間を超える楽劇の最高のクライマックスを生み出していた。