2016年4月16日土曜日

スポットライト 世紀のスクープ

事実は小説より奇なり。
最近たびたび読むポリス・ミステリー、そこでは新聞記者の横柄な取材が、事件を真実から遠のかさせる。
しかし、この映画はボストン・グローブの記者たちが、真実を懸命に暴き出していくサスペンス。
事件の真実は教会という伏魔殿、それに加担する弁護士により封印されている。
描かれているのは時間との戦いというサスペンスだが、伏魔殿との戦いという、真の人間による聖戦の面白さだ。

2016年4月14日木曜日

黄金のアフガニスタン

東京で始まったばかりの展覧会「守りぬかれたシルクロードの秘宝」を観る。 
前日(12日)に始まったばかり、まだ空いていて金細工や象牙、小さな展示物をじっくり眺めることができた。 
会場が表慶館というのも面白い。 近代建築以前の1900年、片山東熊が作った旧東宮御所。 
中央にドーム屋根を持つユニークな建築、インテリアも当然、昔のままだ。 
紀元前4世紀、アレクサンダー大王に始まるギリシャやインド・中国の影響を受け、アフガニスタンで産みだされた財宝の展示は、東の果ての上野の山の19世紀末の欧風建築の中で見学出来る。
 展示も会場も古色に富み、静かに歴史を体験する絶好の機会。 
今や悲劇の谷間にあるシルクロードだが、そこは2500年わたり様々な人とモノと情報が行き交う人間の道。 
TVで観る限り、非人間的な悲劇の廃墟だが、展覧会からは歴史を生き抜いてきた人々の、高らかなる息づかいが感じられ和まれる。

 先々月の末、武庫川女子大の講演会「シルクロードの文化と建築」に参加し、アフガニスタンに眠る文化的廃墟の意味と内容に触れた。 
先月はピーター・ホップカープのザ・グレート・ゲームが読み、19世紀の内陸アジアにおける英露のスパイ合戦、いや様々な人々の交流と探検の有り様を垣間見た。 
そんなことから今日のアフガニスタン展は大いなる楽しみ、早々に見学することにしていたのだ。

 展示された黄金の数々、遠い東の果ての街の硝子ケースの中、静かなミニスポットの光に触れ妖しく輝いていたが、特に興味を引かれたのはアイ・ハヌムのギリシャ語刻銘付き石碑台座とヘラクレス立像。
 それともう一つ、ベグラムの魚装飾付き円形盤。 
アイ・ハヌムはギリシャのアレクサンダー大王以降の植民地都市。 
コリント式の柱頭を持つ建築も建造されたようだが、展示されている小さな石碑にはデルフィーの神託の一部が刻まれていた。 
印刷物がない時代、あのアポロ神殿の建築的意味が文字に表され、この遠いアフガニスタンの北東部の都市に伝わっていたのだ。 
ヘラクレスはギリシャ神話の神だが、棍棒を持つその姿は仏教の執金剛神のモデルである、という武庫川女子大講演会での前田耕作先生のお話。
つまり、ギリシャのヘラクラスはこのアフガニスタンを経由して奈良東大寺の法華堂にやってきたのだ。 
最も楽しかったのが魚装飾付き円盤。
ベグラムの地は海からはほど遠い。
そこに生きる人々は海どころか一面の水の世界を想像する事も難しかったに違いない。
この円盤は海を知らない人々が海を想像する装置。
直径7~80センチメートル円盤にはさざ波をイメージさせる金片が無数に糸で結ばれ埋め込まれている。
磐裏には金辺を縫いつけ結んだ糸を束ねた仕掛棒。
その棒を手で引けば、円盤の表側では魚が跳ね、海はさざ波を打つ。
なんとも素晴らしい、人々はこの円盤で遊び、見ることはない遠い海の世界を想像していたのだ。