2017年8月1日火曜日

建築の変容


現代社会はデザインの時代、その言葉は多様だが、デザインの本来の目的は「人間と社会の開発」、その役割は「人間と世界、人間と人間の関係を調整する」ことにある。従って建築は古来からこの問題に関わってきた。では具体的にどのようにデザインしてきたのか、当然ながら時代の変容に応じ、人間と世界の関係は変わっていく。

デザインの変容(建築の持つ意味の変容)とは「関係構造の変化」を問うことになる。現代建築はもはや技術や芸術の統合者ではなくなったが、建築は人々の生活を豊かに心地よく、美しいものにするためのものであることは変わらない。人間と世界の関係構造が変化のなかの建築デザインの変化、その意味の変容を概観する。

文化史は建築術・印刷術・電悩術の歴史と捉えられる、あるいはデザインの変容は、この三つの「術」の歴史でもある。

前3000年以前~狩猟採集期あるいは前文明期、ここでは住処はあっても建築は存在しない。
前3000年~紀元1500年の4500年間が「建築術」の時代、あるいは農業文明期と見なしうる。つまり、建築の誕生期=コスモロジーとしての建築の時代。
1500年~2000年が「印刷術」の時代、あるいは科学文明期、それは近代建築の時代であり、建築はコスモロジーからランドスケープに変容する。
2000年以降が「電悩術」の時代、情報文明期あるいは前代を工業文明時代と呼べば生命または環境文明時代だ。
  
建築術・印刷術・電脳術に置き換えて、建築の役割を整理してみる。

1)建築術の時代
コスモロジーにより人間は世界を把握する。
建築は体験することによってはじめて存在した。
世界認識を得ることは建築体験をすること、すなわち建築(情報・装置)は体験と一致していた。
建築は自然空間に実体化されたもの、建築空間は人間が人間として生きる空間(芸術空間)。
大地から飛翔した人間は建築をメディアとして神(自然)との関係構築をはかった 。
ギリシャからローマそして中世ヨーロッパ社会は農業の時代・建築術の時代だ。
建築は最大のマルチメディア、同時に建築は世界認識の方法を具体化するメッセージでもあった。
建築は世界を認識するメディア=「世界書物」であり、劇場は人間世界を実感する「世界劇場」。
建築は内在化した知を喚起する装置(ディスクドライブ=記憶術)でもある。
建築はいつでも誰でもアクセス可能な記憶装置。
ギリシャの都市は街全体がメディアシステム、情報交換、情報発信装置。
パルテノン神殿は神との情報交換の場、情報センターとしての役割を担った。
世界認識を得ることは建築体験をすること、すなわち建築(情報・装置)は体験と一致していた。
建築は観るものではなく、体験することによってはじめて存在した。
人間は劇場空間を通し、自分自身がいま世界の何処にいるか、広大の宇宙の何処にいるのかを知ろうとした。
あるいは劇場空間を通し人間は、自分自身の拠って立つ場所を意味づけた(言語構築した=概念化した)。
その場所とは世界の中心(聖地)との関連を持った一義的な場所であり、象徴的世界像に意味づけられた場所でもある 。=世界劇場

2)印刷術の時代
コスモロジーの解体、記号化、視覚化、概念化によって世界を把握する。
ルネッサンス=都市の時代であり、印刷術が主なるメディアとなる。
15世紀の印刷術を含むコミュニケーション手段の発達が、建築を諸技術、芸術の統合者の役割から放擲され建築は解体された。
建築は「世界書物」の役割を「書物」に譲る。
建築は実用的な建物、付加的メッセージのためのメディアとなる。
建築体験は世界認識のための所作ではなく、建築と体験は分離する。
分離された建築は建物となり、現世的快楽のための道具、あるいは世俗的価値を象徴するメディアとなる。
キリスト教的世界観が揺らいだルネッサンス期、画家と建築家は透視画法を駆使し賢明に新しい空間(人間が人間として生きる空間)を模索した。
レオナルドの時代、美術空間は人間が生きる空間として明確に存在していた、決して装飾品ではなかった。
象徴論的世界像に代わり記号論的あるいは絵画論的世界像が人間と世界との関係を取り結すび始めた。
この新たな世界像は印刷術の発明というメディア改革を契機として登場する、と同時に透視画法による世界像といえる。
透視画法の持つ記号性、抽象性、視覚性は従来の体験的世界観を解体し、視覚的世界感。
世界観はコスモロジーからランドスケープへの変容する。=風景としての建築
風景化した世界の中での重要な問題は、神(自然)と人間という絶対的関係ではなく、人間と人間の関係、人間社会の秩序化が最も重要な問題となる。
その時代にあって劇場は人間と人間の関係の構築の場であり、人間的社会構造の把握の場であり、人間と人間の社交の場。
印刷術の時代はオペラと劇場の時代でもある。
 
3)電脳術の時代
環境文明による世界の統合化がテーマとなる。
19世紀の情報環境の成立により、人々は世界を知の構成と編集により知り得た。
しかし、情報から得られるその世界は人間が生きる「世界」ではなく、世界のシュミレーションあるいは世界をめぐる複雑さの把握。
 1960年代は情報化社会の始まり=情報時代(地球共生時代・生命文化時代)・電脳術
この時代はニューメディアによる情報がこれまでになく人々の生活に浸透し始める。
広告、量産品、写真、テレビなどのマスメディアのイコンが巷に氾濫し、社会は産業化から情報化へ変換し始めた。
アーキグラムー>インスタントシティー  /ビートルズー>イエローサブマリーン
実体的な建築空間より、可変的なイメージ空間の方がリアリティーを持つのだろうか。
プランニングや建築構造の問題ではなく、エクィップメント(設備)とパフォーマンス(性能)の問題=形より力、パフォーマンスが建築の役割となる。
バロック都市は建築によってインテリア化されたが、現代都市は建物の中、インテリア空間として装置化されている。=風景としての世界観の変化と継続。

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