2017年7月6日木曜日

フーコーの振り子 ウンベルト・エーコ

陰謀(猟奇魔)に捕らわれることなく、カバラ(神秘主義)世界の歴史書を完成させようとするのはミラノ・ガラモン社の三人、ベルボ、ディオレッタレーヴィ、ガゾボン。
テンプル騎士団の研究者ガゾボンが語る物語は、編集部長ベルボがワードプロセッサ、アブラフィアに記録した多時間・多空間的世界と交錯し、多彩な想像的世界として展開される。

物語の始まりと終わりは、パリの国立工芸院(サン・マルタン・デ・シャン修道院)のフーコーの振り子にあるのだが、その全体は虚構を真実とし、真実を虚構化する壮大なミステリーと言って良いだろう。
テンプル騎士団、薔薇十字、フリーメーソン、聖杯伝説、ドルイド教、ケルト神話、さらに旧約聖書からキリスト教、ユダヤ教、イスラム教とヨーロッパのすべての精神世界が舞台となりミステリーは謎に謎が重なり迷宮へと入り込む。

唯心論が否定され、全ての思考あるいは想像を理性的唯物論にのみ帰結させなければならない近代にあっては、神話やオカルトはもはや感情の表出、ファンタジックなエンターテイメントとしてしか見なされていない。
しかし、近代社会の脆弱性、歴史認識の薄氷性が気になり始めたポストモダンの現代にあって、ヨーロッパの知性はかっての、あるいは別角度からの人間の思考・想像世界に大きく目を開こうとしている。

日常、全く触れることのないカバラ世界、前回は読み通す事が出来なかったが、今回はヨーロッパ最大の知性と言われるエーコが残してくれた、近現代への貴重な批評の書として読み続けせていただいた。

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