2017年4月25日火曜日

内面からの報告書 ポール・オースター

「冬の日誌」に引き続き翻訳・出版されたこの書は題名どうりオースターの内面を綴った日誌。しかし、この書は決して、一作家の内面を描いたものではなく、21世紀の現代に生きる我々の苦悩に通底する、作家自身の経験のリポートと言ってよい。
構成は「冬の日誌」のように時系列に合わせ一連に描かれるものではなく、「オースター」という素材を4面から眺めリポートした報告書。彼の少年期の経験、彼の人生感を象徴する二つの映画、そして彼の青春期の苦悩の中のラブレターとフォト・アルバム。バラバラ4面はしかし、周到に重ね合わされた一つの世界、彼の小説の常道とも言えるポリフォニー形式の報告書だ。
特に興味深いのは「脳天に二発」。その内容はオースターが少年期に観た二つの映画の解説。しかし、「縮みゆく人間」と「仮面の米国」という映画こそオースターが描きたかった彼の内面世界を象徴するもの。彼はこのパートを主旋律として中世ロマネスク期の音楽をこの報告書で奏でている。
4面構成の全体は確かにオースターの青少年期の報告書だが、それを対位法音楽の方法で捉えようとする本意はどこに有るのだろうか。もう、読み終わって一週間、しかし、まだ見えてはこないのだが、彼は1968年を起点としたポストモダニズム、後期資本主義、欲望の民主主義と言われる現代世界の始まりを描いているのではないだろうか。その年は間違いなく、同世代のボク自身の起点でもあり、苦悩な現代世界の通奏低音旋律なのだ。

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