2016年8月17日水曜日

その姿の消し方 堀江敏幸

古物市で見つけた一枚の絵はがきから始まる、フランスの片田舎の人々との関わり。
堀江さんの端正な文章に乗り、見知らぬ空間と時間をたゆたう、緩やかな読書体験。
「河岸忘日抄」以来、彼の言葉の世界のファンだが、この小説は幾様にも詠み解ける詩文集と言って良いのではないだろうか。

その姿の消し方、そのことばの消し方、ひとの消え方、街の消え方、建物の消え方。
その姿とはもぐらのこと、小説はもぐら探し、そう、消えた世界を探す探偵小説だ。
そんな冗談を言いたくなるほどこの小説、いや、紀行、堀江敏幸ワールドは面白い。
もぐらだけではない鯨もピノキオも出てくる。
全く分野は異なるが、ル・カレやポール・オースターの世界に共通するミステリーがある。

しかし、これは堀江敏幸の作品。
舞台はロンドン、ニューヨークではなくパリ、そして、フランス西南部の小さな街。
ボクはいつも堀江さんの作品を、彼女が登場しない恋愛小説だと思って読んでいる。
田舎の、郊外の、都市の、街中の片隅に生きる、繊細で優しい何処にでも居る人々。

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