2016年1月30日土曜日

感性デザイン

生産消費という枠組みで示される産業経済の繁栄こそが個人の豊かさを実現する、という価値観をもつ社会パラダイムからの転換が問題となっている今日、物材そのものの価値より、物材に内在する情報価値の方が重視されつつある。

モノや環境は意味情報の為の容れ物である、という観点がデザインするという行為にとって重要。 生活者としての私たちは「物材や環境の充足」は必ずしも「豊かさ」にはつながらないことを知らされ、受動的にモノやサービスや情報を得るだけでは飽きたらないという情況を幾たびか体験している。  
本当にほしいモノは自分の外部にはないのであって、自分自身の内部から産み出し、表現しなければならない、という実感である。

 従ってデザインは物材の選択肢を多様化するのではなく、個々人の固有性、特異性に基づいた価値観をいかに保証するかがテーマとなってくる。 そこでの主要な価値観は「生産性」「合理性」「効率」ではなく、主体の持つ多様な「感性」。
 個々人が自らの感性を覚醒し、開発していく「感性経験」を様々の面からサポートし、個々人の側から主体的、自律的に自由に参加できるような情況や環境をデザインすること、このことこそ感性時代のデザインテーマと言えよう。  
リアリティは内部ー>感動は作品側にあるのではなく、自己の解釈にあるのだ。

2016年1月16日土曜日

もしも建物が話せたら

映画を観ながら学生時代の「建築を愛しなさい」を思い出していた。 イタリアの建築家ジオ・ポンティが書いた名著だ。 建築は決して視覚的遊戯の産物ではない。 それは風景や歴史、ライフスタイルやパフォーマンスとともにある多彩なアートであるということ。 今日の映画はそんな建築の世界を6人の映画監督がそれぞれ一つずつ、20世紀の建築をリポートしている。 特に面白かったのは「オスロ・オペラハウス」。 建築は単にオペラの為の場ではなく、歌手に、ダンサー、観客や劇場支配人、掃除人等々、オペラハウスに関わる様々な人々のパフォーマンスの舞台となっている。 映画を観る我々は街中の対岸から、湾岸に建つオペラハウスを真っ白な雪の中、夜空に輝く夢のような世界として体験する。 つまり映画監督マルグレート・オリンは、建築家スノベッタは「オスロの都市全体」を一つのオペラ劇場(世界劇場)としてデザインした、と語っているのだ。