2015年4月28日火曜日

スイス、バーゼルのヴィッラ

安くて便利なコンビニ建築とチェーン店モールのインテリアばかりと思っていた最近の建築雑誌だが、よく見ると決してそんなことはない。 a+u534の表紙はスイス・バーゼルの要塞のような住宅だ。 矩系の壁面を縦長で縁なしのガラス窓が完璧な対称形に穿っていく。 対称が面白いのではなく、まるで古典主義建築のような重々しい外観を生み出しているのがなんとも奇妙だ。 四面の外壁面とその壁面にはめ込まれた縦長両開き扉の板戸は屋根材に使う砂付きルーフィングで覆われている。 この奇妙な住宅の平面図は完璧な古典主義建築の対称形で構成されている。 その単純矩形は大と大の間に二つの小が重ね合わされる四つのスペース。 しかし、よく見れば平面形も外装も現代の住宅の流行そのまま、まるでプアで簡素という他はない。 だが、写真で見る限りインテリアはリッチだ。 光沢のある透明なオリーヴ・グリーンで塗られた重厚で厚みが感じられる木板の壁面と同材の床面を手製の刺繍カーペットが覆い、その空間は昔のヴィッラの趣といって良い。 事実ガラス窓を壁面に引き込み、内部扉がキッチンとバスを覆えば、全体はかっての貴族のサロンに変身する。 人々が着飾り、集い、談笑し、音楽を聴き、ダンスを踊る。 それが住宅とはいえ往時のヴィラやパラッツォのスタイル。 紹介記事ではパヴィリオンと記されているが、この建築は貴族時代のオマージュとして作られている。 立地は30年代のヴィラが広々とした緑豊かな庭園に立ち並ぶかってのブルジョワ階級の住宅地。 こんな場所であるからこそ、奇妙でプアな外観とリッチな内観が多くを語り、黙することなく、本来のヨーロッパ建築の役割を再確認しようとしているかのようだ。 つまり、「建築」はどこまでも想像的世界、非日常的空間であるということ。

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