2009年10月13日火曜日

オペラ・トスカの建築

プッチーニのオペラ・トスカは陰惨・迫力を持つ作品だが、当時流行の現実主義オペラ(ヴェリズモ・オペラ)として有名。
その物語は徹底したリアリズムによるオペラとして大成功をおさめている。
ヴェリズモで表現されたのは物語だけではない。
1800年のナポレオンのローマ侵攻のある1日の出来事であり、現在もそのまま使われているローマの三つの有名な建築が、その物語の舞台として登場する。
さらにその実際の建築から建築へと移動する時間経過もオペラの中に正確に取り込まれている。

登場する三つの建築、第一幕はサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会。
決して大きくない教会だが、初期バロック教会の全てが、そのままいまに残されている貴重な建築。
サン・ピエトロ大聖堂のファサードのデザイナーとして有名なカルロ・マデルノの設計。
第二幕はローマの壮麗な宮殿の一つパラッツォ・ファルネーゼ。
ダ・サンガロ、ミケランジェロ、ジャコモ・ポルタという建築家がファルネーゼ家の依頼に基づき、長期にわたって作り続けた著名な建築。
第三幕はハドリアヌス皇帝の廟墓として2世紀に建設され、その後法王庁を守る城になり、さらに18世紀にはオペラと同様、多くの政治犯の牢獄として使われたサンタンジェロ城。

このオペラのウ゛ェリズモ(現実性)についてのこだわりを、もう一つ付け加えておこう。
それは、オペラの序曲から終曲までをほぼ一日のドラマとして正確に作り上げていること。
昼食の籠を運ぶ神父の歌、子供たちの歌うテ・ディウム、朝寝坊の歌姫の到来、宮殿での夜の歌会、夜明けの羊飼い少年の歌声、明け方を告げるサンピエトロ大聖堂の鐘の音(プッチーニーはこの鐘の時間と音を正確にオペラの中に仕込んでいます)そして終幕でのカウ゛ァラドッシの悲嘆な叫び「星も光りぬ」。
特に面白いのは、羊飼いの少年の歌、この場面はオペラの進行に全く関係ないが、とても美しい音楽で一度聞くと忘れられない。(省かれて上演されることもあるようです。)
プッチーニがこのオペラを作った1900年、その頃のローマには朝早く、羊を追う少年たちの姿が所々で見られたそうだ。

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