2014年6月10日火曜日

永遠の旅行者 橘玲

若くして弁護士事務所を退職し、国を出て世界中のどこをも居住地とすることのない、「永遠の旅行者」真鍋恭一が語る物語。

これはハードボイルドと言って良いのだろうか。

サスペンスでもありディテクティブでもあるがチョット違うな。

ジャンルなどどうでも良い、キンドルで初めて知ったとても面白い作家だ。

橘玲はツィッターでもすでに12千人ものフォロワーを抱える人気者、最近作「タックス・ヘイブン」もネット上では大人気、いまさら書くことは何もないのだが、チョットメモっておきたい。

小説としては決して巧くはない、面白いが、話しと思いが入れ込みすぎていて、シッチャカメッチャカだ。

しかし、描かれる世界に対する周到な調査と知識にはビックリさせられた。

最近のネットでは、これだけ分かりやすく、入念に克明に書かれたコンテンツを読んだことがない。

考えてみれば、そのはずだ、ブログ読者は次から次と沢山のコメントを読みあさっていく。

周到すぎる記事など読み飛ばされてしまい、気がつかない。

かく言うボクがその一人、恥ずかしいことに、「永遠の旅行者」を読むまで何も知らなかった。

メモっておこうと思ったのは、国際金融やテロでもなければ、伊豆の南端やハワイや香港、ニューヨークのホームレスの末路やシベリアの抑留者のことではない。

国に利用される人々ではなく、国を捨て、機械的な国を利用しようとする人々の話し。

「永遠の旅行者」とは歌を詠まなければならない、生きとし生けるものの歌のような気がしたからだ。

物語の前半に時々ニーチェの「ツァラストゥラはかく語れり」が引用される。

19世紀、ニーチェの生存中は全く売れなかった本だ。

「神の死」を確信したツァラストゥラはひとり山に登り、孤独の中で思索する。やがて、山を下り「超人」を語るが、聞いてくれる人は一人もいない。

そんなツゥラストラを真鍋恭一はサンフランシスコのアダルトショップで英語版を二ドル四九セントで手に入れる。

その時、アダルトショップの店主は恭一に「君の孤独に幸いあれ」と呼びかける。

そしてまた、天使のまゆと恭一のワルプルギスの夜のような出会いのシーン。

実際は水族館の夜だが。作者は「舞踏する星を産むためには、ひとは心に混沌(カオス)を持っていなければならない。君のこころのなかにもいまだ混沌はある。」とニーチェの言葉を引用する。

Google Keepから共有

コメントを投稿