2013年1月4日金曜日

旅芸人の記録 テオ・アンゲロプロス

旅芸人の記録 テオ・アンゲロプロス
暮れに観るつもりが、今日になったテオ・アンゲロプロスの「旅芸人の記録」、キネカ大森。
1975年カンヌで大賞受賞というからもう40年も前の映画。
しかし、いいものはいい。
音質は硬いが、カラー画面は覚悟していた以上には痛んでいない。
終始アコーディオンのメロディーが物語をリードする現代のギリシャ悲劇。
アンゲロプロス・ファンとしては一度は観ておきたい貴重な作品。
ストーリーはウィキペディアが詳しいので、ここでは感想だけ。
アンゲロプロスが使う音楽は罪深い、いや罪は音楽ではない。
音楽を必要とするのは人間、人間はいつでもどこでも罪深い。
罪深い人間による悲劇は古代そして現代へと引き継がれる。
音楽は感情、感情は人間を鼓舞し類を固める、しかし時に対立をも強調する。
音楽が強調する対立はやがて武器による悲劇へと引きつがれる。
ウィキにあるように「旅芸人の記録」はギリシャ神話の「アトレウス王家のアガメムノン」が引用されている。
物語はファシズム・イタリア、ナチズム・ドイツの侵略を受ける20世紀のギリシャ、その小国ギリシャが戦後、米ソの対立に巻き込まれる現代史の悲劇。
現代ギリシャの悲劇はアガメムノンを座長とする旅芸人一族に象徴され、旅から旅の一族は音楽を奏で、ダンスを踊り、小舟のように翻弄される。
限りなく引き継がれるギリシャの悲劇、しかしアンゲロプロスはこの映画でギリシャを救う。
神話ではオレステスはエレクトラに救われミュケナイの王となる。
しかし「旅芸人の記録」のオレストスは密通するクリュスタイメストラとアイギストスを射殺するが、新政府に帰順しないパルチザン捕虜として殺されてしまう。
クリュソテミスの息子は母と米兵との結婚式の際、重要な無言の抵抗をする。
祝宴のテーブルクロスを引き剥がすという抵抗だが、アンゲロプロスはそのシーンを夕焼け空のもとの美しい海岸での小さな響きとして表現する。
砂の上の真っ白なテーブルクロスの中の食器が奏でる小さな響き。
それは列強に抵抗する小国ギリシャの再生を象徴する音楽だ。
バラバラとなった一座を再興するのはエレクトラ。
死んだオレストスが演じていたタソスを演じるのはクリュソテミスの息子。
メーキャップを手伝うエレクトラは思わず彼をオレストスと呼んでしまう。

2013年1月4日
by Quovadis

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