2014年5月20日火曜日

バルテュス展

バルテュスの絵は観る絵であって、考える絵ではないようだ。 猫がなぜ可愛いか、などと考えても意味がないように。 ビデオの中のバルテュスは語っている。 自分は芸術家ではない、絵を描く職人だと。 展覧会場の第一室にバルテュスが模写したピエロ・デラ・フランチェスカの絵があった。 ヤッパリそうか。 一人よがりの妙な得心を持って、彼の絵画の世界にわけ行った。 彼が描き続けたのは、中世やルネサンスの宗教画のように静寂で織り目正しい、しかし、どこか寂しい具象画ばかり。 光の中の世界が色とカタチとテクスチャーによって画布の中に丁寧に具体的に構成される。 描かれた少女はどれも不自然のポーズで片脚を組むが、 表情は硬く、視線は的を得ず他者とはばらばら。
勿論、絵を観るものの視線など眼中にない。 見方を変えればまるで神聖な機械のよう。 ルネサンス特有の透視画法も退けられ、 様々なカタチある物体はなにを意味する事なく、 ただただ二次元の静止画の上にバランスよく散らばっている。 かって、有元利夫の絵が好きだと書いた。 藤田嗣治も嫌いではない。 バルテュスはこのふたりに似ている。 だから、昔からバルテュスの絵も好きだ。 あえて言葉を探すと、 彼の絵はリアルな日常だが何処か非現実。 見る人を拒否し、距離を置く。 迎え入れようという優しさなど何処にもなく、 群れることを拒否し孤独を誘う。 最近読んだ好きな作家を持ち出せば、 それは間違いなく、アントニオ・タブッキだ。 さして混むこともない平日の会場。 二時間以上ほっつき歩いたが、 何も言わないのだから、何も聞こえない。 でも、有元利夫展同様、中世的な音楽が絶えず鳴り響いていたような気がする。
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