2012年11月7日水曜日

愛の妙薬 

底抜けに楽しいイタリア・オペラは何かと聞かれたら、ボクはドニゼッティの「愛の妙薬」と答えるだろう。
イタリアに行けばオペラは限りなくさまざま。
しかし、オペラ通ならともかく、ボクにとって「楽しいオペラ」と言えばロッシーニとドニゼッティ、ヴェルディの「ファルスタッフ」、それと昨年聴いたゴルドー二の戯曲をフェラーリがオペラ化した「イル・カンピエッロ」くらいしか見あたらない。
そういえば、オペラを楽しむならドニゼッティかロッシーニ、そしてベルーニでしょうと教えてくれた人がいた。
今日はそんな、ドニゼッティーの「愛の妙薬」を堪能した。

恋に落ちた男は100パーセントみな、このオペラのネモリーノと同様、喜劇的だ。
しかし、ここで笑ってはいけない、男の愛とはいつもこのように一途で可愛いもの。
そんな普遍的?な男の話しだが、このオペラのように相愛を得ることが出来る男はそんなに多くはない。
そして、また新たな恋へ、涙を拭い、男は喜劇的にさまよいつづける。
結果的に悲しいのが、いつも男の恋だが、このオペラは悲劇ではない。
なんとも羨ましいではないか、オペラのネモリーノは最愛のアディーナの愛を得ることに成功する。
男たるものこのオペラが歌い上げるネモリーノの愛を見習わなければならない。
題名は「愛の妙薬」。
しかし、それは決していかさま薬売りリドゥルカマーラが売る惚れグスリのことではない。
「妙薬」は神話にあるクピドと同じ。
射抜かれてくだけるのではなく、真なる恋人アディーナを射抜く「強さ」を持たなければならない。
いや、強さではないな、なんだろう。
とまぁ、バカなことを言っているが、このオペラは傑作だ。
ボクにとってはシモンとは両端にある、大好きなオペラだ。

今日、大画面でこのオペラを楽しんだ。
メディアは2009年グライドボーン音楽祭。
キャストは以下。
【作曲】ドニゼッティ Gaetano Donizetti/【指揮者】マウリツィオ・ベニーニ Maurizio Benini/【演出】アナベル・アーデン Annabel Arden/【出演者】エカテリーナ・シューリナ Ekaterina Siurina,/ピーター・オーティ Peter Auty

このキャストリスト、ボクには初めての歌手ばかり。
そもそもグライドボーンの作品を見ることが少ないからだ。
しかし、この音楽祭の評判は良く知っている。
ただ、いつもモーツアルトかドイツものと思っていたが、今回は抜群に楽しいイタリアのベルカントの華「愛の妙薬」。
主役脇役のすべての歌手たち、みな素晴らしかったが、気がついてみると、イタリア人は一人もいなかった。
舞台の雰囲気は原作のスペインでもなければイギリスでもない、どこかイタリアのイル・カンピエッロだろうが舞台は不思議な雰囲気。
客席に平行ではなく45度に振った広場と建物、その構成は大胆で不思議を通り越し、不安定な愛のドラマとしては多いに成功している。
沢山の登場人物が出たり入ったり、そして明かりがついたり消えたり、まさにイタリアの小広場が生き生きと浮かび上がっていた。
さらに褒めるならば、字幕の対訳も楽しめた。
このオペラの楽しみはイタリア語と音楽の関係に違いない。
イタリア語がわからないボクには致しかたないことだが、わかれば言葉と音楽のハーモニー、もっともっと楽しめたはずだ。
しかし、対訳は緻密に音楽を追っている、また訳からも言葉と音楽は重なって聴こえる。
これはとても大事なこと、入念にこの映像を日本語化してくれているのが良くわかる。
そして最も楽しかったのが、まさにこのオペラの華クピド役?、薬売りリカドゥルマーラ役の歌手の歌と演技だ。
まだ調べきっていないのでこの歌手の名前は書けないが、彼の歌と演技にはただただ圧倒され、楽しまされた。
ここのところオペラ三昧の毎日。
映画でもいい、こんなに楽しめるのならば。

2012年2月21日
by Quovadis

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