2014年3月5日水曜日

モダニズムの「ナクソス島のアリアドネ」

ナクソス島のアリアドネ オペラ研修所公演

真っ白なミース・ファン・デル・ローエのバロセロナ・チェアに座り、ペットボトルをラッパ飲みするアリアドネのシーンはなんとも魅力的だ。

伯爵のわがままから、悲劇と喜劇を同時に重ねあわせて公演する、十八世紀の宮廷を舞台とした不思議なオペラ劇。

歌とダンスと笑いを誘う演技、多人数で様々なキャラクターを必要とする「ナクソス島のアリアドネ 」は研修所の公演にはピッタリ、リヒャルト・シュトラウスの世界をタップリ味わった。

ドタバタの楽屋劇という見立てだが、全体は調和の取れた多元的イメージを持つ興味深い傑作オペラだ。

シュトラウスは前作「薔薇の騎士」同様、複数のプリマドンナのアリアと重唱がリードするオペラを、なんと第一次世界大戦のさ中に生み出した。

ミノタウロスを退治しアテネへ帰還するテーセウスはクレタの姫アリアドネを絶海の孤島に置き去りにする。

残された彼女の失望と孤独を慰めるのは木と水の精だけ。

その哀しみはエコーとなって洞窟に谺し消えていく。

ある時、海上に恋人テーセウスの船。

いや、アリアドネを助け出すのは酒神のバッカスだ。

この神話ではバッカスの存在は意味深い。

バッカスによる救助は何を意味するのか、それは悲劇に重ね合わされた喜劇の中、ツェルビネッタを追う道化たちの歌とダンスに表される。

今日の公演、彼らの歌とダンスとファッションは現代的で格好良く華やか、その躍動感はこのオペラの魅力を増幅している。

冒頭に書いた真っ白なミース・ファン・デル・ローエのバロセロナ・チェアもこのシーンで意味を持つ。

失望と孤独の持つ人間的多元性をシュトラウスは画期的なドタバタ劇としてオペラにした。

まさに、世界大戦が持つ、様々な民族主義と民主的と言われるドグマの格闘をシュトラウスはオペラに引用しているかのようだ。

当日の座席は中劇場中央の最後尾という特等席。

座席の後ろは後日放映のためのビデオカメラ。

放送日はマークし、必ずやもう一度聴いてみたい。