2013年11月21日木曜日

水の眠り灰の夢 桐野夏生


ここのところ東京を描いた都市小説が面白く文庫三昧だが、 昨晩は「水の眠り 灰の夢:桐野夏生」を読んだ。 1963年9月、東京オリンピック前年の地下鉄銀座線爆発事件、 いわゆる「草加次郎事件」だが、その周辺と東京の下町が描かれている。 そこにこんなフレイズがあった。 「せっかく戦災にも遭わずに残った建物や道が、オリンピックのために、高度経済成長のために、と惜しげもなく壊されていくのだ。この銀座の商店街も例外ではなかった。松屋百貨店も松坂屋百貨店もこまつストアーも皆、大改装工事中だ」。 思い出すが20世紀の都市建設は、確かに便利さは提供してくれたが、 その罪は結構深く失ったモノも大きい。 それはまさに無印都市建設時代。 そして21世紀は液状化、都市は崩壊しハイパーヴィレッジへ向かうとのこと。 ルイジ・ノーノのオペラ「プロメテオ」を聴いてみたい。

2013年11月18日月曜日

ふたりのアトリエ

南フランスの寒村に住まう、 晩秋を迎えた老彫刻家の前に、 ピレネーを超えて、 春風のような若い女性が現れる。 b0055976_840127.jpg 映画の時間はどこまでも静かな山のアトリエ、 ひと夏のふたりだけの制作風景だ。 モノクロームの映像は微睡むような日差しをおい続ける。 時たま村の悪童たちの不協和音が響くだけ、 小鳥の声と風に遊ぶ木の葉の音だけのアトリエの時間。 そう、この映画は時間を描いている。 晩秋の老彫刻家と春のような若いモデル。 そこは神のみぞ知る、(旧約聖書は間違っていた)親密な言葉のない時間の流れ。 彫刻家にとっての至福な制作の時間はやがて完成、山々は秋を迎える。 風は山を下り、銀輪を羽ばたかせ、小鳥のように、マルセイユへ旅立った。 一発の銃声に小鳥たちが羽ばたき飛び去ると、 エンディングの六小節ばかりのメロディが流れる。 この映画では音楽はこのメロディだけ。