2013年5月28日火曜日

空想の建築ーピラネージから野又穫へー展 町田市立国際版画美術館


「東京都内で二番目の高さになる超高層ビルの建設が進んでいる。地上五十二階、地下五階の虎ノ門ヒルズは建物の地下一階を道路が貫通する珍しい構造だ」と今朝の筆洗。 町田市立国際版画美術館は「ピラネージから野又穫へ」展を観る。 予想していたが野又氏の空想は圧巻だ。 規制を緩和し、空地権をも加算して建築の巨大化・高層化を図っている超都市(ハイパー・ヴィレッジ)東京。 緩和どころか、現在の都市デザインから建蔽率・容積率・高さ制限という 一切の建築規制が除去される事が現代の都市計画家・建築家の夢なのだろうか。 野又氏の大きな「空想の建築」群を観ながらボクはそんなことを考えていた。 作品はとても版画とは思えないほど巨大で色鮮やか。 その画面の中央いっぱいに一塊の空想の建築、それはブリューゲルのバベルの塔か、古代エジプトの大神殿か。
いや、想像が直結するのはピラネージの牢獄だ。 しかし、侏儒ではあったがピラネージには人間が描かれていたが、野又氏のハイパー・ヴィレッジ(超都市)には人間はいない。 彼だけではない、阿部氏のピラミッドにも人間は見えない。 現代の「空想の建築」には人間は登場しない、いや、想像は出来ない、不要なのだろう。 展覧会は画期的、多彩で大いに楽しめた。 題名通り、ピラネージが豊富だが、感激したのはヒュプネロトマキア・ポリフィリの中のプルチノ・デッラ・ミネルバが展示されていたこと。 そうかこの奇書、日本でも金沢工業大学ライブラリーに収蔵されていたのだ。 1499年版と言うことから今日の最古の展示作品ということになる。 そして19世紀初め、フランス革命直後に出版されたルドゥの建築図集。 さらに、ピラネージに多大な影響を与えた17世紀のビビエーナと19世紀のモーツァルト魔笛をテーマとしたカール・フリードリッヒ・シンケルの舞台背景画、どれもこれも一度は現物にお目にかかりたいと思っていた作品ばかりだった。
町田市国際版画美術館もかって、建築仲間と見学したことはあったが、今日はひとり小田急町田駅から歩いて訪れた。 美術館は段丘を降りた樹林の中、こんな素晴らしく天気がよく気持ちの良い日曜日の公園はピクニック気分の若い家族たちで一杯だった。 そもそも、町田駅に降りたのは始めてだ。 駅周辺は賑やかな商店街、古い街の特徴だろう新規のチェーン店より個人商店が元気よく犇めいていて、とても居心地が良い雰囲気だ。 グローバル化されない町には昔からの美味しいランチ屋が必ずあるはず。 ネット・グルメには一切関心ないが、こんな街では探したくなる、自分自身が好む店を。 決して終わりかけた安食堂でもなく、一律でピカピカなハンバーグ店やラーメン屋でもなく、街の住民が毎日でも愛用する、廉価で小綺麗で、メニュウ多彩な小さなレストラン。 早速、みつけた「グリルママ」、美人ママだ! メニューを眺め迷いに迷いまったがメンチカツランチをオーダーする。 するとすぐに、やはりチェーン店では出せない味だ、小さなカップのコンソメスープ、薫りと湯気が同時にやってきた。 そしてほどなく、じゅうージュウと揚げたてフカフカの大きなメンチカツにキャベツとマカロニサラダが載る白いプレート。 そう30年前には、自宅のある市ヶ谷や事務所のあった神宮前にもこんな店、何軒かあったのに。 この日はこんな所にボクの「空想の建築」を見つけたようだ。