2012年1月1日日曜日

スニオン岬のポセイドン神殿



エーゲ海に突き出たアッティカ半島の最南端のスニオン岬、
ここに海の神を祭る建築、ポセイドン神殿が建つ。
岬の先端に建つこの神殿は神そのもののようにみえる。
沖を行き来する船から岬を眺めると、
海の神ポセイドンがむんずと起きあがるかのようだ。
船上のギリシャの人々にとって、
建築を特に朝日夕陽の斜めの光りで眺めることは、
まさに神の降臨に立ち会うような経験を実感していたに違いない。

この神殿はボクたちに建築の有様を教えてくれる。
小さな写真ではむずかしいが、ポセイドン神殿をじっと眺めていると、
なにか新しい空間が立ち上がってくるように感じられないだろうか。
音楽を聴いたとき、
体の中に日常とは別の新しい空間がわき上がってくるように、
建築を体験することから、全く新たな空間が想像される。

この神殿が建っていないスニオン岬の風景を想像して見ると良い。
そこは世界中のどこにでもある、
美しい岬の一つにすぎない。
しかし、神殿が建つこの岬は、
もはや「人間のための特別な場所」だ。
建築は「人間の空間」を作ろうとする行為。
スニオン岬のポセイドン神殿は
建築の持つ意味と役割をボクたちに教えてくれる。