2010年6月13日日曜日

若仲展

千葉市美術館は鞘堂と言われるユニークな建築。
昭和2年に建設された旧川崎銀行千葉市店の建物を、新しい建物が鞘のようにオーバラップし建設されている。
鞘堂方式と言われるこの建築の保存方法は、当時、建築関係者には話題となり、15・6年前のことだが、その経過を見学に行ったことがある懐かしい建築だ。
古い建物を基礎から浮かし、レールが敷かれた車輪の上に載せ移動出来る状態にする。
そして全体を100メートルほどバックさせ、空いた用地に新築部分を建築する。
やがて、大きな一階ホールが建設された後、再び古い建築を静々と前にせり出し、 新築途中のホールの中に引き入れ、ようやっと全体の工事を完成させる。
昔、日本の木造住宅の増築等ではよく使われた引き屋の工法による建設工事。
その工法を旧川崎銀行の保存のために実施するというので、かって、建築中に友人たちと2回ほど見学に行ったことがあったのだ。

しかし、完成してからは一度も見学していない。
今日「伊藤若冲展」を見学に行き、その会場がかっての引き屋建物、新しい美術館であることをはじめて知った。
珍しいことに、突然、息子が「昼飯」を食べにやってきた。
そして、彼の誘いで午後から急遽、若仲展を見に行くことになった。
千葉市美術館で「若冲展」をやっている事、また、この美術館が鞘堂である事は、昼飯までは全く知らないことだった。

つゆ空の千葉までのドライブは些か面倒でもあったのだが、 今日は息子の運転、たまには素直に誘いには応ずるもの。
結果、美術展と美術館まさに一石二鳥、何とも楽しい見学となった。
美術展は7・8階。 階層分断はこの手の美術展ではやや不便。 作品の説明板が小さくてやや読みにくい事もあり、入館当初の最も重要なことでもある、全体の展示構成を掴めないままの見学となった。

展示は若仲の師匠筋の絵師の作品も同時に集められていて、若冲とその周辺を理解させようとする画期的なもの。
一つ一つと作品を見るごとに感じられて来る若冲の世界。
彼の作品はいつも大らかだ、その作風も内容も。
絵を描かせるスポンサーたちもまた同じ。
18世紀後半と言う時代、そこは今とは異なる、何ともユーモラスでのんびりとした空気が流れていたに違いない。 いやぁ、そんなことはないだろう。 ここは若冲の世界なのだ、それも絵の中にのみ広がっている彼独特の世界。
今回の展示作品、かなりが個人蔵のもののように感じられた。
いつもの若仲のきらびやかな彩色に比べ、水墨による無彩が多く、また、小品が沢山だからだろうか。

しかし、その全体はいつものと同じ彼独特の世界、その絵は造形的であり、物語的、どこまでも自由、かつ大胆な画面構成と表現上の工夫。
そのどれもが、入念な観察と逞しい創作欲の結果である事が良く判る。
なかでも、今回、はじめて見た「樹花鳥獣図屏風」は圧巻。
綿密な独特の点描は「デジタル時代の先駆けではないか」と思ってしまう。
今日の若仲展はしばらくブームが続き、一段落した若仲をもう一度、あるいは改めて日本の絵画の大スターとして、じっくり観てもらおうと言う企画のようだ。
その意図は十分に果たされている。
やや手狭な会場だが、決してせせこましい、がやがやした雰囲気ではない。
近め遠目、自由に立ち位置を変え、じっくり作品が楽しめた。
楽しみにしていた「像と鯨図屏風」は明日からの展示でお目にかかれなかったが、これはまたこの次の楽しみと言う事だろう。

梅雨空の元だが、思いもよらぬ息子の運転での素晴らしい半日。
幸い、この展覧会は6月27日まで開かれている。
お近くの方は決して、お見逃しのないように。