2010年4月7日水曜日

薬師寺


唐招提寺の次は当然、薬師寺だ。 例によって秋篠川と近鉄の中間に伸びる一本道を南に向かう。 路地の両側、最近だろう、茶店やみやげもの店が軒を連ねている。 曇り空だが、目の前はもう薬師寺の塔。 なんとも優美、リズミカルな六つの屋根の重なりはいつ見ても心を踊らせる。 しかし、薬師寺の楽しみは今日はここまで。 雨風に叩かれた一日とはいえ、今は絶好の観光シーズン。 周辺の駐車場は何処も満員。 タクシーやドライブで見学する客も大勢だが、大型バスから次々とはきだされる修学旅行生と老若男女のツアー客。 とても、のんびり見学出来る状況ではない。 とわいえ、ここまで来て、ただただ帰るというのでは格好良すぎる、白鳳伽藍や東院堂、宝物殿、玄奘院伽藍のセット券を買い、南門ではなく、北の興楽門から入場した。  
まずは塔が見たかった。 急ぎ足、集団がいなくなるのを幸いに東西の塔を眺める。やはり、文句無し、新築の金堂ともども西塔の朱の輝きは曇り空でも圧巻だ。 こうなると見慣れた国宝の東塔や東院堂がやや寂しげに感じられる。しかし、次の集団が押し掛ける前、眺めていて、ふと考えた。 この塔はもちろん最高の塔だが、でも、何故か、遠くから眺めることの方につよく惹かれる。 そうか、塔は遠くから見るべき建築かもしれない。
近くから見るのは木組み、ディテールの面白さ。 今日のような春の昼下がりは、やはり、田園の遥か遠くから臨む塔の姿が、本来のデザインであったかもしれない。
そうと気がつくと、もう写真はいらない。 東院堂の聖観音立像は今日はレプリカのはずだ。 ホンモノは昨日、博物館で閉館時間で追い出されるまで眺めて来たのだから。 それと金堂の薬師如来と二つの名菩薩。 その国宝としての価値の保存に入念なのは当然かもしれない。 しかし、本来の丸柱に防火シャッターの額縁をむき出しに取り付ける無神経さにはもはや言葉がない。 日本人は何故、見える見せ方、その空間全体への配慮を怠るのだろう。 これでは国宝の仏様がかわいそう。 そう、ここは博物館というニュートラルな空間ではない。 長きにわたり、多くの人々が大事にして来た仏であり仏の場、一期一会の建築空間ではなかったのか。 b0055976_125041100.jpg
コメントを投稿