2010年3月21日日曜日

安田靫彦展 

梅と桜の間の季節に観る、日本画の展覧会。
わが家にとっては、時といい、所といい、すべて絶好の場所での展覧会だ。
ホテル・ニューオータニ内のこの美術館は展示スペースは二部屋のみ。
広さからくる制約で、大作がずらり、と言うことはない。
しかし、毎回の展示は傑作ぞろいで至極贅沢な催し物。
ホテル宿泊客へのサービス企画ということであろうが、ボクにとっては至福の散歩コース。
毎回、週末の午後の絶好の楽しみとなっている。

安田靫彦は誰もが知る花の名手。
特にその枝振りに思いを尽くす梅の絵は、時に自然の香以上に我々を惹き付けて止まない。
今日もまた静かな展示室での柔らかい光の下、そのひとつひとつは静かに花開いていた。
少数展示ではあるが、作品の解説は今回も入念だ。
梅や桜はさておき、多くの掛け軸の題材はみな、万葉集・伊勢物語・・・古歌からの引用。
作品鑑賞はまず歌を読み、その世界を画家に導かれ、また新たにイメージするという趣向。
そして今回の展示で最も気に入ったのが西行像だ。
願はくは 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃。
誰もが知る名歌だが、靫彦はこの歌を、描き過ぎず、語り過ぎず、 淡彩のまま、爽やかに、華やかに、筆を走らす。
「芸術は人格の表現」と豪語する、靫彦ならでは世界がそこにある。