2010年3月12日金曜日

ファルスタッフ 

3月12日、オペラ研修所公演「ファルスタッフ」を観る。 若いオペラ研修生たちの公演をいつも楽しみにしている。 オペラパレスではまだまだ主要な役割を演じられなくとも、 中劇場では思う存分、日頃の成果を披露出来る。 開所以来12期60人足らずのメンバーたち、 毎回、様々な役柄や歌に取り組み、多くの観客を楽しませる。 最大の楽しみはやはり彼ら彼女たちの成長だ。 えっ、この人こんなに高音、柔らかかったっけ。 いやぁ、前回に比べ、発声も無理がなく、音質にボリュームが出て来た。 こんな、とてつものない早い節回しの重唱、今日は声もリズムもピッタリ。 そして、われわれ一般のファンから見て、最もうれしいのはチケット代。 オペラづくりは最もお金がかかかる商業的パフォーマンス。 研修生だって、既に自律した立派な社会人、出演料だって一人前で当然だ。 しかし、どんな仕組みかは知らないが、他のオペラ公演に比べれば、 とんでもない安い料金で提供されている。 「ファルスタッフ」はヴェルディ最晩年の喜劇。 作品としては、若い彼らにはちょっと難しいのではないかと思っていた。 しかし、とんでもない、ファッタジックな舞台美術にのって、 文字通り、とんだり、はねたり、歌ったり、なんとも、楽しい舞台を作ってくれた。 その貢献の第一はファルスタッフ役の青山貴。 彼の歌と演技は何処から見てもこのオペラの中心。 その役割を彼はきっちりはたし、最後までこのオペラの難しい役どころを歌い演じ切った。 つぎに評価すべきは特別参加の演劇研修所第4期生たち。 このオペラ、彼らの応援無しでは華やがない。 ドラマと音楽にリズムを与えたのは、無音だが若い彼らのダンスと演技。 たぶん、オペラ研修生たちだけではここまでの楽しい喜劇は難しかろう。 そして、特筆すべきは、オーケストラだ。 時たま、聴きに行く、オペラパレスのオペラで、いつも不満に思うのはオーケストラ。 なぜ、いつもあんなにバランスが悪いのか。 理由は歌手たちの音量の違いにあるのかもしれないが、 何度か聴いた中では満足のいくオーケストラは一度もなかった。 しかし、今日はすばらしい。 アンサンブルも歌手との間合いもピッタリだ。 指揮はアリ・ベルト、管弦楽は東京シティ・フィルハーモニック。 最後に触れておこう、当然、関心の女性たち。 今日のアリーチェは高橋絵里、メグ夫人は堀万里絵、ナンネッタは上田真野子、ウィックリー夫人は茂垣裕子。 茂垣さんは賛助だから当然だが、他の3人も期待以上に素晴らしかった。 とくにナンネッタの上田真野子、彼女は昨年からのまだ12期生、あの柔らかい高音はまだまだ磨かれるだろう。 ただひとつ残念なのは、楽しみしている、やはりアリーチェを歌うはずの中村真紀。 彼女は今日は公演日ではなかったのだ。 ほっとしたのは、他のオペラ公演では必ず登場する、「追っかけおじさん」の幕間のかけ声。 この研修所公演では、そんな鈍感なおじさんたちは一人もいない。 はつらつとした爽やかな楽しいオペラは今日の初台のおじさんたちにとっては、 台本どおり「一番よく笑った者が、最後に笑うのだ」。